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【楽曲分析】もょ響アワー・最終回

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     皆様こんにちは、毎回おしゃれな駄洒落をイメージしつつも、自爆の末にマヒャド級ダジャレオヤヂの地位にまで落ちぶれた解説担当のサイファ(3×歳独身)です。さあ皆さんご一緒にどーぞフトンがフっとんだぁ!

    楽曲解説もいよいよ最終回。残すはラストバトルとその先に続くエンディングを残すのみとなりました。


     ●魔王との対決
    今まで、「ライトモティーフ」という言葉についていろんな曲の分析で書いていきました。このライトモティーフは「悪のモティーフ」というくらいなだけに、戦闘や洞窟など悪しきものが現れるシーンで使われていることは、以前も書いたかと思います。
     このドラゴンクエストの世界において最後に戦うのが諸悪の根源である「魔王」。この悪の象徴を描くにあたり、「悪のモティーフ」を使用することは当然の流れとはいえます。最後の死闘にすぎやま氏が使用したのはライトモティーフ技法の集大成。この曲の何より特筆すべきは、旋律がすべてライトモティーフとその変形のみで作られていることに尽きます。
     冒頭、全管弦楽によって極太のライトモティーフが序奏として演奏され、続いて重い足音のような低音に乗って、旋律が現れてきます。この旋律はもちろん「悪のモティーフ」そのものです。変形の仕方も基本的なリズム変奏はもちろんのこと、モティーフの1音を1オクターブ上げたりもしています。この「1音だけオクターブあげる」処理は、まるで鏡に映したかのように「同じだけど何か違う、でも同じ」な印象を与え、ここでもすぎやま氏の「音選び」の感性が生きていると感じさせます。
     オーケストレーションにおいても高音域・中音域・低音域の使い分けが非常に見事です。とぐろを巻くような低音、鋭く突き刺すような高音。同じフレーズでも与える印象がまったく違いますよね。
    また、この曲で特徴があるのが伴奏。基本的な4分の4拍子で音形も単純でありながらも、強烈なアクセントを伴った独特の荒々しい和音の構成は「原始主義」のテイスト。
     音楽での「原始主義」とは、簡単に言うと民族性の強い音楽をさらに荒々しく、感情の赴くまま(=原始的に)に表現した音楽とでもいえるでしょうか。この作風の作品は決して多くはないですが、もっとも有名なのがイゴール・ストラヴィンスキー(1882〜1971)のバレエ音楽「春の祭典」です。複雑な不協和音とリズムで、初演の際にけが人が出るほどの大騒ぎを起こした作品としても知られていますが、現在ではオーケストラ音楽の重要なレパートリーの1つになっています。
     「魔王との対決」においては、魔王がその悪の本能のままに暴れ狂う様子を「原始主義」の響きにのせています。しかし、「不協和」を伴った原始的な音でも決して不快感を招かない(むしろ、その強烈さにぞくぞくする)のはこの曲でも前出の「春の祭典」においても共通するところです。
     一瞬の空白の後に、非常に冷たい伴奏に乗って、新たなフレーズが現れます。ファゴットのソロが長く続きますが、このソロももちろん「悪のモティーフ」の変形です。
     ズヴァリ!これが、すぎやま氏の見せるモティーフ技法の最終進化形。このような自由な独奏を「カデンツァ」といいますが、たった4つの音からなるモティーフをこういう形に進化させるアイディアには本当に驚嘆させられます。
     再び音楽は最初の主題へ。最後は全管弦楽で「悪のモティーフ」が高らかに演奏され、曲を閉じます。

    ●時の子守唄
     普通、こういうRPGのエンディング曲というのは、華やかなファンファーレや壮大な序奏からはじまり喜びにあふれた音楽が展開されるものなのでしょうが、この曲は最初からどうも「なんかエンディングっぽくない・・・」(←筆者個人的感想)と思いましたが、曲が進むにつれて展開されるのはドラクエらしい壮大なフィナーレ。今まで私たちが第3部で演奏するドラクエVIの曲についていろいろ見てきましたが、前出の「魔王との対決」がライトモティーフ技法の集大成なら、この「ドラクエVI」という組曲に流れる美学の粋を集めたのがこのエンディング曲「時の子守唄」です。
     冒頭の序奏に流れる和音から何か煮え切らないというか不安定です。通常、きれいに解決されている和音の基本は「ド−ミ−ソ−ド」ですが、これは、なぜか左記の例でいう「ソ」にあたる音(第5音といいます)が半音下がっているため。家に例えれば、2階部分がなんかずれて建てられているように、安全ではあるが「なんか大丈夫?」的な印象を与えてしまうのですが、これも「音選びのセンス」がなせる技。序奏の序奏ともいえる箇所でわざとこのような不安定なものをいれることで、その後の序奏の展開を効果的に見せています。
     その後に続く導入の楽句は、2つの音+3つの音のフレーズの組み合わせ(実際には、最初に1つ休符がありますが)。それがやがて「2+3+4」になり、繰り返されてさらに音の長さが倍になり、断固とした意思を持ったクレシェンドをすることによって、きわめてスケールの大きな序奏ができあがります。 この「2+3」というリズムはアントン・ブルックナー(1824〜1896)の作品にみられるもので(ブルックナー・リズムと言われます)、有名な交響曲第4番「ロマンティック」などに登場しています。また、同じ音形を繰り返して音楽を盛り上げていく手法もブルックナーが得意としたやり方です。
     そして現れる主題。チェロと(途中から)ホルンによって奏でられる主題はどこまでも美しくせつなくやさしい歌。「エーゲ海に船出して」でも書いたすぎやま氏の「歌の美しさ」がここでも見事に示されています。
     その後、曲は3拍子の自由な形式に変わり、ヴァイオリンとハープの伴奏にのって、トランペット、続いてイングリッシュ・ホルンによってが新たな旋律が奏されます。どことなく割り切れない印象を与えますが、この旋律は3拍子の中に4連符が入っているため。
     この「割り切れない不安定さ」がこの曲の美しさのヒミツのひとつとも言えます。その後にオーボエの独奏で主題が現れ美しくかつデリケートに曲が進んでいきます。
     
     一瞬の沈黙の後に激しい低音の伴奏に乗ってまた序奏が再現されていきます。この序奏の再現、最初は「2+3」だけだったのが、今度は「2+3」のあとに「3+2」になっていることも面白いところです。(これも前出のブルックナーが得意とした技法のひとつ)。
     そして全管弦楽で主題が再現されます。美しさにさらに壮大さが加わり、まさに曲の眼目ともいえるところです。さらに序奏に現れた「2+3」のリズムがたたきつけるような和音を伴って奏され、最後のクライマックスを築き上げていきます。そこで一瞬の総休止。
     曲は一転してガラス細工のような繊細さをもって、だんだん小さく消え入るように進んでいきます。最後の5小節は主音(この場合は「ソ」)の音に第3音(「シ♭」)を入れるだけ。たった2つの音だけで作られる音楽が、ディミヌエンド(だんだん小さくする)しながらの繰り返されるだけなのですが、手のひらから美しい砂がさらさらと零れ落ちるような効果を作りあげています。
     
     そして、最後の最後。弦楽器によるごく小さな1音ですべてを解決させて曲を閉じます。


     さて、ここまで今回私たちが演奏するドラゴンクエストの楽曲13曲について見てまいりました。いかがでしたでしょうか。「ゲーム音楽」というジャンルも、こういう分析的な視点で見るとさまざまな発見があることに、筆者自身も驚いています。毎回サムい駄洒落を入れるのが一番苦労した勉強させていただく思いで書かせていただきました。
     また、ただの音楽好きなアマチュアプレイヤーにすぎないの筆者のにわかな知識からみても、このドラクエの音楽を生み出したすぎやまこういち先生が、その才能だけではなく古今東西のいろいろな音楽を勉強された上で作曲されているかが理解できました。ゆえに「大好き」だけではない。その音楽に心からの敬意と感謝を持って、演奏していかなければいけないなと改めて襟を正す気持ちにもなっております。

     今回の私たちの冒険は、このブログを書いている時点(平成23年6月中旬)ではまだ始まりの序曲です。限られた時間の活動を通して、どんな音楽を作ることができるのか。筆者も楽しみなところです。そして、冒険の仲間たちも弦楽器を中心にまだまだ募集をしております!
     何よりも、この「楽曲分析」が少しでも皆様がこの「ドラクエ」の交響組曲をより好きになれる、新たな発見を持って聴いていただける一助になるならばこれに勝る喜びはありません。

     なお、一連の「楽曲分析」に当たってはいくつかのウェブサイトを参照させていただきました。


     さあ、もょもと交響楽団の大冒険はいよいよはじまります!


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