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【楽曲分析】もょ響アワー・第4回

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    皆さんこんにちは。不定期連載「もょ響アワー」のお時間でございます。解説はいつものとおりもょもとのかなり寒いだじゃれおっさん・サイファが担当いたします。

     先月、mixi内のコミュニティ「マジでドラクエ演奏するから俺ら」による「合奏イベント」が行われました。きわめて限られた時間による合奏オフですが、非常に質の高い合奏イベントとなり、参加者の皆さん楽しいひと時をすごしました。「限られた時間の中でいい音楽を追求する楽しさ」を大好きな曲でやれることが本当に幸せに感じます。

    さあ、楽曲分析も4回目。今回は「ドラクエVI」の中から3曲です。いよいよこの組曲の最大の特色である「ライトモティーフ」が登場します。復習になりますが、「ライトモティーフ」というのは「短い主題」。ドラクエVIでは、「悪のモティーフ」という主題が戦闘曲や洞窟・塔などの音楽に使われています。

    ● 勇気ある戦い〜敢然と立ち向かう
     バトルメドレーの曲です。4音から成る短い「悪のモティーフ」がいろいろな形を見せていきます。最初の曲である「勇気ある戦い」は半音階で下降していく序奏を経て、最初のテーマがトランペットで奏でられます。ライトモティーフを短くした変形を2回繰り返していますが、2回目は最後の音を半音上げる処理を施し、この後の音楽への注意を喚起していますね。
     音楽も旋律的でありながら非常に緊張感があるものですが、この緊張感を演出している陰の立役者がチェロとコントラバスによって演奏されているベースライン。通常、和音の変化があれば最も下で和音を支える重要な低音が動いていくのは自明の理ですよね。しかし、よく聞くとこの部分では冒頭から約16小節間低音部に変化がないことがわかります。このように同じ音がずっと続く低音の形を「オルゲルプンクト」(持続低音)といい、これが聞く人に無機質な印象を与えることによって戦闘の緊張感や恐怖感をより一層高めているわけです。
     続く部分もライトモティーフを主体としていきますが、今度は伴奏系が細かい音形に変わり、さらにモティーフを短い形に変形させ立て続けにつなげていくことで、スピード感のある音楽を作ります。そのスピード感が最高潮に達したところでいきなりその流れが消え、ロングトーンが表れます。次へつなぐだけの橋渡しにしかすぎないようにに見えるのですが・・・・。
     ズヴァリ!ここがすぎやま氏の「音選びのセンス」が最もよく出ているところなのです。ここでは半音ずつの音の開きを4つ積み重ねています。これ、実際にやるとわかるのですが、ためしにピアノで半音階を4つ同時(ここではミ・ファ・ファ#・ソ)に鳴らしてみましょう。
     ・・・めちゃくちゃですね(笑)。普通にやれば音楽にすらならないところですが、すぎやま氏は最高音(ミ)を持続させることで「緊迫感をつくり」、残る3つの半音階を広い音域にちりばめ、さらにメロディックな動きを与えることで「予想がつかない展開」を演出する効果を作り上げています。ナレーションをつけるなら「勇者VSスライムのバトル展開予測不能っ!いったいどうなってしまうのか〜っ!!!」(←「ガチンコ!ファイトバトル」風で)というところでしょうか。最後にこの「予測不能」を最初の低音部に関連する音(属音)にもってくることで一気にまとめあげます。ここで「続くっ!!!」となる仕掛けです。
     そして、続いた「敢然と立ち向かう」では、全体を3連符に支配させた曲に変わります。ライトモティーフもすべて3連符を主体とした形に変形させていますね。さらにバトルの緊迫感が高まっていますが、これが3連符を多用した最大の効果ではないでしょうか。「勇気ある戦い」が、数学的に見れば「割り切れる」のに対して、この3連符の「割り切れなさ」が音楽の緊張感をより強く与えていると思います。

     
    ● 奇蹟のオカリナ〜神に祈りを〜奇蹟のオカリナ
    ちょっと変わった構成の曲です。「奇蹟のオカリナ」は短い主題提示と終結を兼ねており、主部はこの「奇蹟のオカリナ」を展開させた「神に祈りを」になります。ここでは主に「神に祈りを」について見ていきます。
     この曲の形式はいわゆる「フーガ」と呼ばれるもの。「フーガ(遁走曲)」とは極めて大ざっぱに言えばある旋律が奏でられたあとに別な声部が同じ旋律を演奏する・・・といったように「1つの旋律が追いかけっこする」曲です。技法自体はかなり古くから存在していて、J.S.バッハ(1685〜1750)がその大家として知られています。「フーガ」には厳密なお約束事がかなりたくさんあり、この曲は必ずしも音楽学的に正しい「フーガ」の形式ではないのですが、清冽な祈りを表現するに十分な効果が出ています。
     まず、「奇蹟のオカリナ」のメロディがフルートのソロによって演奏されます。その後すぐに「神に祈りを」からフーガが始まっていきますがここでまず注目したいのがこの部分の楽器構成。木管楽器によるアンサンブルですが、ここになぜか「チューバ」が加わっています。ご存知のようにこのチューバという楽器は金管楽器系の最低音部を担うもの。この楽器にはオーケストラを支えるにふさわしいどっしりとした厚みのある音が出る反面、音の輪郭が見えにくいという欠点があります。木管楽器の中でチューバをこだまのように響かせるオーケストレーションは、この楽器上の欠点を逆手に取ることから生まれたアイディアでしょう。フーガの技法と相乗してこの曲想をより清潔に見せる効果を上げています。まあ、チューバがこういう役割を与えられることは少ないので、奏者はこのフーガの部分をふがふが言いながら吹くことになるとは思います(笑)
     続いて、同じメロディが弦楽合奏に登場。最後に「奇蹟のオカリナ」のメロディが現れて曲を閉じます。


    ● 暗闇にひびく足音〜ラストダンジョン〜暗闇にひびく足音
    洞窟メドレーの曲です。これも通常ダンジョンの曲「暗闇にひびく足音」を最初と最後に持ってきています。
     冒頭、ライトモティーフを変形させた序奏をつけて曲が始まります。この曲の主題はライトモティーフとの関連はなく、独立した主題です。弦楽器の細かい音形を伴奏に用い、ひんやりとした色彩で曲を進めていきます。途中に現れる半音階の走句も印象に残ります。最初は単純に半音ずつ下げていき、次は3つの音のかたまりを半音ずつ下げていくという、同じ半音階の下降形にも工夫を見せているのも面白いところです。
     続く、「ラストダンジョン」。本来、すぎやま氏の持つ音楽は非常にメロディックで聞きやすいのですが、ここではかなり前衛的な響きが使われています。しかし、「前衛的」であっても「わかりにくい」わけでは決してないのがすぎやま流なのでしょう。前衛といっても進化しすぎて筆者のような凡人には理解不能な「ゲンダイオンガク」ではなく、前衛的な響きを持たせながらも「クラシカルな美」を失わないところはさすがだと思います。
     この曲にはメロディらしいものは存在しません。半音階を必ず含む不協和な和音が弦楽器によって奏され、その間に独白めいたリズムが現れる、ちょっと独特な形です。この弦楽器に現れる和音も、きちんと音を選んで作られているのでしょう。ハーモニーが非常に繊細なもので、ここでもすぎやま氏のハーモニー感覚の繊細さがみえるものです。ところどころに現れる独白も、ちゃんとライトモティーフを変形させて作られています。
     この後また「暗闇にひびく足音」が繰り返されます。最後に奏でられる和音も、シンプルながら非常に緊張感を持たせていますね。

    音楽はいよいよラストバトルへ。


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