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【楽曲分析】もょ響アワー・第3回

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    みなさま、こんにちは。もょもと交響楽団のドラクエ楽曲分析、第3回目です。解説はいつものとおりちょっと洒落好きおじさんお兄さん・サイファが担当いたします。

    さあ、楽曲解説は第3部に入っていきます!

     第3部では、「ドラゴンクエストVI」より、選りすぐりの曲プログラミングいたしました。一昨年の演奏会では感想と一緒に本当に多くのリクエストをいただきましたが、その中でも一番多かったのがこの「VI」の楽曲。ドラクエVIの楽曲は暗めの曲が多いため華やかさには欠けますが、音楽的な完成度はきわめて高く、それゆえに演奏の難易度も高い組曲です。
     余談ですが、IV以降の交響組曲「ドラゴンクエスト」は組曲ごとにゲームのストーリーやコンセプトにあわせて全体的な色彩感をある程度統一して構成されています。この「VI」はもちろん、「IV」もどちらかというと若干冷たい感じがする組曲です。逆にモンスターを仲間にすることができたり「結婚」や「家族」がストーリーの柱となる「V」は、戦闘曲なども含め非常に暖かみのある色彩が感じられます。

    この「ドラクエVI」の組曲を読み解くキーワードは2つ。
    ズヴァリ「ライトモティーフ」「変奏技法」です。

    ★ライトモティーフ
     直訳すると「短い主題」。ある人物や状況を表す短いメロディ(長くても2小節くらい)を、音程やリズム、オーケストレーションを変化させて曲中にちりばめることで、感情や状況の変化を表しながら曲中の統一感を出していく作曲技法です。クラシック音楽ではリヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)がその超大作楽劇「ニーベルングの指輪」(全部演奏するのに4日間かかる!)で確立した技法ですが、原型はその前の時代からあり、有名なところではエクトル・ベルリオーズ(1803〜1869)の「幻想交響曲」にこのライトモティーフの先例をみることができます(全曲を通して表れる「恋人の主題」)。
      「ドラクエVI」では4つの音からなる「悪のモティーフ」というライトモティーフが、戦闘や洞窟などの音楽に使用されています。また、前回でお話した「IIの戦闘の音楽はこのVIと深いかかわりがある」の答えがここにあります。第2部で私たちが演奏する「戦い」の主題はこの「ライトモティーフ」とよく似ていますよね。もちろん「II」が作曲された時点でこのような展開があるとは想定されて作られてはいないでしょうが、私たちもょもと交響楽団のプログラミングには、こんなところにもこだわりをもって組まれているのです。
     ちなみに、ライトモティーフの技法は「ドラクエIII」でも使用されています。VIほどわかりやすくはないものの、曲の統一感のみならず、音楽的にロト三部作を1つにまとめあげることにも成功している見事な音楽的アイディアです。どこか知りたい人はぜひもょもと交響楽団もしくはすけさん吹奏楽団に参加してくださいね! (笑)すけさん吹奏楽団は今年の夏から募集を開始します!

    ★変奏技法
     あるメロディのリズム・拍子・調性を変えたり、飾りをつけるなどの変化をさせて違う音楽を作る作曲技法です。「ヴァリエーション」ともいいます。変奏曲と名のつく曲はオーケストラの作品だけでもたくさんありますが、クラシック音楽の作曲家でこの変奏曲の大家といえば、L.V.ベートーヴェン(1770〜1827)。有名な交響曲第5番「運命」や第9番(いわゆる「第九」)にもこの変奏技法が使われています。
     すぎやま氏はこの「変奏曲」の達人でもあり、シリーズのほかの楽曲でもこの「変奏技法」を巧みに使っています。どこか知りたい人はぜひもょ(以下省略)!

    ●エーゲ海に船出して
     タイトルの通り、航海をするときに流れる音楽です。
     I〜IIIまでのロトシリーズと比べて、最も曲想が変わったのが「海」の音楽です(こう書いちゃうと「Iに海の曲はないだろ!」とか言われるんですよね)。ロトシリーズではワルツのリズムに乗って楽しくものどかな雰囲気、どんぶらこっこという印象でした。しかし、IV以降の海の音楽ではこれが一変。IVの「海図を広げて」からは雄大な音楽が展開されるようになりました。この「エーゲ海に船出して」もその流れを汲むもので、曲想はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)やセルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)に代表される19世紀ロシア・ロマン派の楽曲を思わせます。しかし、すぎやま氏はロシア・ロマン派の特徴であるスケールの大きさを残しながら、これにつきものの「土臭さ」をとことん洗練させ、美しさだけを際だたせました。そのスケールの大きさと美しさの前にはチャイコフスキーもラ フマニノフも裸足で逃げ出すと思われます(笑)。

     冒頭、ハープにカデンツァ(自由な独奏)風の独奏で曲が始まります。2小節間の短いものですが、素晴らしく幻想的で聞いている人のハートをがっちりつかんでしまいます。その後に弦楽器で奏でられる美しい美しいメロディ。最初から最後までひたすら素晴らしい「歌」の奔流で曲が進んでいきます。第2部の「おおぞらをとぶ」同様、この曲のメロディ以外のパートも非常に旋律的で、伴奏や対旋律というよりも、歌の1パートとしての役割を持たせているのも特徴のひとつです。オーケストレーションも豪華な輝きを演出するトランペットやシンバルなどが一切使われず、全体的に柔らかい手触りで統一されています。管弦楽曲ながら、全体的に「多声部で作られた大規模な歌曲」の印象が強く、ここでもすぎやま氏の賞賛されるべき才能の1つである「メロディの繊細さ」が際立った曲であるといえましょう。

    ●木洩れ日の中で〜ハッピーハミング〜ぬくもりの里に〜フォークダンス〜木洩れ日の中で
     最初で述べた「変奏技法」が使われているのがこの曲です。変奏技法を使って書かれた曲のことを「変奏曲」といいます。最初に「主題提示」があり、「第1・第2・・・・・」と何個かの変奏を経た後に最後に「コーダ」(主題が再現されることが多い)というのが基本的な「変奏曲」の構成。この曲はタイトルを見ると街の音楽メドレーなのですが、小規模ながらも前述した「変奏曲」の形式にのっとって書かれていますので、メドレーであるとともに「街の変奏曲」といった趣きもある楽しい曲です。

     弦楽器による2小節の序奏のあとにピッコロによって街のメロディが奏でられ、続いてヴァイオリンによって新たな主題が演奏されます。明るい朝の光を思わせる「木洩れ日の中で」ですが、前述した変奏曲の形式から見ると、ここで演奏された2つのメロディが変奏されていくことからこの「木洩れ日の中で」が変奏曲の「主題提示」の役割を果たしていることがわかります。

     つづく「ハッピーハミング」が第1変奏。通常、第1変奏では大きく形を変えないことが多いのですが、ここですぎやま氏は曲想のまったく違うジャズ風の変奏曲を持ってきました。金管楽器を主体にした華やかなオーケストレーションもジャズの味付け。カジノの音楽らしく、ゴージャスで思わず指を鳴らしたくなるようなノリのいい音楽ですが、よく聞くとちゃあんと最初の「木洩れ日の中で」のメロディに沿って書かれていることがわかるかと思います。街メドレーにカジノを入れる構成はIVやVでも使われていますが、「変奏曲」という形式を取り入れていることでより進化したものといえるでしょう。
     
    そのあとの「ぬくもりの里に」は変奏曲にはなっていません。しかし最初の「木洩れ日の中で」との有機的なつながりを感じることはでき、変奏と変奏の間の「間奏曲」としてみることができると思います。ここで注目したいのは転調のうまさ。16分音符が上下して一気に転調していきますが、場面転換しているようでとても面白いものです。

     お次の「フォークダンス」が第2変奏にあたります。3拍子の舞曲風変奏曲です。主題よりもアレンジがシンプルになり、ちょっとひなびた印象を与える変奏曲ですが、前2つにちょっと凝ったアレンジや転調が使われていますので、シンプルな曲で耳休め・・・といったところでしょうか。このあとに、最初の「木洩れ日の中で」が再び登場。これが最後の「コーダ」の部分になります。
     また、最初の序奏部分が曲と曲のつなぎ目になっているところにも注目です。この序奏が、転調の形を見せながらメドレー(変奏曲)をつないでいきます。曲のはしを使って橋渡しをさせているのも面白いところです。

    次回は第3部の中間3曲についてです。いよいよ「ライトモティーフ」が登場します。


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