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【楽曲分析】もょ響アワー・第2回

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    みなさま、こんにちは。 もょもと交響楽団のドラクエ楽曲分析の第2回目です。いつものとおりアヤしいステキな解説お兄さんこと、わたくしサイファが担当いたします。

    第2回では、第2部「ドラゴンクエスト・クラシックス」で演奏する楽曲の後半3曲について分析していきたいと思います。

    ●おおぞらをとぶ(III)
    シリーズ屈指の名曲とも言われ、単独のファンも多い曲です。本来ならこういう曲に分析を加えるのはもう野暮なのですが・・・
    全体の楽曲構成も基本的にA-B-Aという基本的なもので、作曲技法にもハーモニーの構成にも特別なものは一切使われていません。分析という面から見れば目を引く技法や素材は正直何もない(笑)のです。しかし、この曲は作曲者すぎやまこういち氏の持つ数多くの音楽的才能の中でも、ズヴァリ!メロディに対する「アイディアの豊富さ」がもっとも見事に発揮されている作品でもあると思います。また、それを奏させるオーケストレーションも群を抜いてすばらしいものです。

     これがもっとも如実に示されているのがこの曲の冒頭です。旋律に使われているのは、たったの1音!そしてこの部分を構成している楽器はフルート1本とハープ1本だけです。「旋律」も「楽器使用」も極限までムダをそぎ落としたものですが、筆舌に尽くしがたい魅力をもたせるだけでなく、そのメロディの中に信じられないほど多くの物語をこめることができるのはさすがに「匠の技」。本当にシンプルなものですが聞く人の心をつかんで離しません。そのメロディがフルートからオーボエへ、さらには弦楽器を主体とした管弦楽に引き継がれていきます。今度はメロディラインこそ変えないものの打楽器を中心とした楽器群を使って厚みを与えていき、さらにホルンによる雄大なオブリガード(対旋律)をつけています。ある意味「お約束」的な展開ですが、これが旋律から見える世界を劇的に大きくさせていますね。

     続く中間部は自由な形式で幻想曲風に展開。その後に再び表れる主題では、旋律こそ最初と同じ楽器構成ですが、弦楽器のトレモロ(弓を細かく動かす)奏法による伴奏を加えています。
     特別な技法は使わないまでも、「メロディのアイディア」そして「楽器編成の繊細さ」の2つがこの曲の真価かなと。ファンの間では「神曲」とまで言われ、特別な思い入れを抱く方も多いといわれるこの「おおぞらをとぶ」。そのヒミツはこんなところにあるのかもしれません。


    ●戦い〜死を賭して(II)
     空気が一転、魔物たちとの戦いのメドレーです。短い序奏の後、ホルンによってテーマが奏でられます。激しい戦いを想起させるこの旋律、実はこのコンサートの「第3部」で演奏する曲たちと非常に深いかかわりがあります!(これについては、第3部の楽曲分析で見ていきます。「VI」の組曲のCD持っている人はちょっと注意して聞いてみてくださいね)。続いての部分も戦いの剣戟を思わせる楽器のやり取りが続きますが、ここで非常にトリッキーな技が。ここでは、曲の冒頭にホルンで示されたテーマを短くパーツ化し、構造を変えて巧みに組み合わせることによって1つのメロディを構成させているのです。ひとつ間違えれば収拾がつかなくなりかねないのですが、これをごく自然にまとめあげ、おまけに曲の疾走感を演出する。このあたりのバランス感覚は本当に見事だと思います。
     
     間奏をはさんでメドレーはラストボスの音楽へ。同じ「戦い」でも状況は一変します。前半では音楽の流れにスピード感を持たせていましたが、ここでは逆に一音ごとに重さを与えるようにテンポを遅くしたり、四分音符中心のフレーズに変えています。オーケストレーションにおいても伴奏を受け持つ低音楽器系のハーモニーに厚みを与え、スポットを当てています。途中低弦楽器に見られる半音進行のフレーズも非常に効果的です。真逆の対比を与えつなげることで、同じテーマでまったく違う性格を表現している好例でもありますね。
     
     余談ですが、我らがもょもと交響楽団の指揮者・田中氏はこういったボス系の音楽の解釈が非常に素晴らしいです。田中氏の魅力であるボスっぽい外見熱いタクトが振り出すIIのラスボス・シドーの音楽はこのプログラムでも聞きどころのひとつ。筆者もプレイヤーの1人として実際の合奏ではどんな指導、解釈をしてくださるのか楽しみなところでもあります。


    ●勇者の故郷〜馬車のマーチ(IV)
    フィールドのメドレー曲です。弦楽器とハープによる非常に美しい序奏の後に、フルートとオーボエ(2回目はホルン)で旋律が演奏されます。物悲しく印象的なメロディですが、面白いなと思うところもあります。
     それは「同じ音形を4回繰り返している」こと。実はこの「4回繰り返す」はメロディが冗長になるという理由で使われないことが多いのです。
     この例にモーツァルトの「交響曲第40番」の1楽章冒頭を挙げてみます(大変有名な曲なので、クラシックは苦手という方も聞けばすぐにわかると思います。興味のある人は検索してみてくださいね)。モーツァルトは同じ音形を3回までは繰り返すまでも、4回目は冗長になるのを避けるためか違った音形でまとめています。対して「勇者の故郷」ではこの「4回」を使っていますが、決して冗長ではないですよね。フレージングを長く取ることで、IVの勇者が背負った運命の重さや深さが美しさとともに表現できていると筆者は思います。
     
     この後に続く「馬車のマーチ」。マーチとありますが、トランペットによって奏でられるメロディの形はどちらかというと古典的なファンファーレに近いものです。ここでは、伴奏につける弦楽器の走句が非常に印象的です。
     そして、この2つのメドレーに共通しているのが「グリッサンド」です。グリッサンドとは、音を移動するときに区切らず、滑らせて音程を変えること。前半では、弦楽器によって演奏され、物悲しいメロディをより感傷的に演出しています。後半は・・・もういうまでもありませんよね。全管弦楽によって演奏されるマーチのクライマックス。トロンボーンによる強烈なグリッサンドの合いの手が、演奏者にもお客様にもアドレナリンの分泌を大いに促し、冒険の興奮をさらに高めていきます。ここで見られるように、同じ技法からまったく違った性格を引き出すのもすぎやま氏お得意の技。曲の最後に1つグリッサンドを聞かせるのも全体の統一感を持たせる効果があります。

    第3回は、演奏会第3部で取り上げる「ドラゴンクエストVI」の楽曲について書いていきます。音楽的にも進化したVIの音楽。これも分析していくととても面白いものです。


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