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【楽曲分析】もょょクラシック 第4回 〜かわいい坊や、私と一緒においで〜

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    この「もょょクラシック」もちょっとご無沙汰してしまいました。いや、忙しかったんですよ。
    新作の小説を書くのに忙しくって・・・。ミリオンセラー期待されていますの、最新作の「西巣鴨ウェストゲートボール」(仮称)。
    そんな愚痴をこぼしている解説の石口イライラ(ニース在住)でございます。

    さて、楽曲解説。今回はドラクエVの「大魔王」です。もちろんラスボス戦で流れる音楽。
    通常、ドラクエのラスボス戦の音楽というのは、その恐怖感や威圧感を厚いオーケストレーションを使い、音の威圧感で表現する曲が多いように思いますが、このVの「大魔王」はある意味別な性格を持った曲です。
    いわゆる、あえて薄いオーケストレーションを使うことで、大魔王の恐怖や緊張感を表現しているといえましょう。

    冒頭、全管弦楽のアコードから、管弦楽曲としては珍しい「ティンパニの独奏」で幕を開けます。そのあと突然音楽は小さなリズムを刻み、ホルンによる主題がが表れます。不気味なメロディですがどこか美しいのが特徴でもあります。
    このホルンの主題、ソロ⇒二重奏⇒三重奏と声部が増えていきますが、常に音量はピアノ。小さな音量を保ちつつ声部だけが増えていくことで大魔王の姿が徐々にみえていくような表現がなされていますね。
    「暗黒の世界」の主題を引用したメロディ(Aとしましょう)がフルートによって奏された後に、この曲のもっとも重要なモティーフ(Bとします)がホルン・トランペット・木管という順番で交互に奏されます。上向きへの跳躍を多用した、不安定なメロディです。

    そして次のポイント、弦楽器によるフーガ。

    先ほど書いたAとBの巧みに組み合わせた複雑なリズム、最初にヴァイオリンで奏される上向きの跳躍音型が、続くヴィオラでは下向きの跳躍音型に変化する「ミラーリング」という技法が用いられています。
    何よりもその特徴は、「音の選び方」。各パートの音を見ていくと、もう脈絡がないというかなんというか。単独のパートだけに注目しているとわけのわからないとしか言いようがないのですが、これはいわゆる「十二音技法」と呼ばれるものに近いのではないかとみることができます。

    「十二音技法」とは、アルノルト・シェーンベルグ(1878〜1951)が確立した作曲技法で、ごくごく簡単に言うと「1オクターブの中にある12の音を均等に使って、調性の束縛から逃れる」作曲法です。このフーガでも、メロディでは同じ音をほとんど使わず、1オクターブの中にある12個の音を自在に組み合わせています。
    また、音の変化にも音程の変化をそのまま維持して全体の高さを変える「移高」という方法がとられているのも特徴。それに、ヴァイオリンからチェロ・コントラバスに現れる音型も基本のモティーフ以外はみなバラバラです。

    ・・・と柄にもなくまじめに書いていますが、一番すごいのはこれだけ小難しく面倒な仕掛けでめちゃくちゃな感じであっても、全体の統一感は全く崩さずに一つの「美しい音楽」を構成しているところ
    すぎやま氏の「音選び」のセンスの素晴らしさがこの組曲中、最もよく出ているところといえます。

    その後に最初のホルンの旋律の変奏形が、同じホルンによって奏された後に、再び主題へと戻っていきます。

    最後は、ティンパニ・バスドラム・スネアドラムによるパーカッションアンサンブルが表れます。
    メロディを刻むティンパニ、乾いたリズムを作るスネアドラム、地鳴りのようになるバスドラムの極大のアンサンブルはまさに大魔王の「断末魔」。
    最後に全管弦楽の一音で、大魔王は息絶えます。

    不気味な音楽の解説を書いていても、僕の目の前に今広がっているのは紺碧の地中海。
    断末魔のパーカッションの音に思いをはせつつも、フランス窓のわきで、シャンパングラスが鳴らす高い音が自分に似合うと改めて感じる、解説の石口イライラ(ニース在住)でした。



     タイトル出典:F.シューベルト作曲 歌曲「魔王」より

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