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【楽曲分析】もょ響アワー・第1回

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    皆さんこんばんは。「もょ響アワー」解説担当(?)のサイファと申します。公式ブログ開設にあたり、「楽曲紹介」を書かせていただきます。よろしくお願いします!

     さて、書くとなったはいいが最初はちょっと困りました。今回演奏する楽曲がゲームのどんな場面で流れるかということは皆さんよくご存知のはず。
     それならば、今回私たちが演奏する交響組曲「ドラゴンクエスト」の楽曲を「オーケストラ曲を分析する」という観点から紐解いていこうと。音楽だけにスポットをあて、作曲技法やオーケストラの技法を見ていくことでこの楽曲の魅力を引き出せたらなと思い、今回は「楽曲分析」という形でつづっていきたいと思います。
     このブログを読んで頂いている皆様が、「ドラクエの音楽をより聞きたくなった!」「もょもと交響楽団の演奏を聴きたくなった!」 「もょもと交響楽団でドラクエ演奏したくなった!」 などなど、ドラクエの楽曲をより好きになっていただける一助となれば、大変うれしく思います。

    皆様ご存知のとおり、この一連の交響組曲は国民的人気を誇るRPG「ドラゴンクエスト」の音楽を、作曲者すぎやまこういち氏自身がフルオーケストラのための組曲として編纂したものです。
     氏の楽曲はゲームの中の電子音で聞くだけでもわくわくしたり涙したり・・・と十分に魅力的なものでしたが、この楽曲がフルオーケストラの交響組曲として発表されたとき、大きな衝撃と感動をもって迎えられました。そして、この楽曲は「オーケストラは堅苦しい」というイメージを一掃し、ゲームのファンである若者達を中心に「クラシック音楽」というものをより身近にすることにも成功しました。
     現在までにこの交響組曲は9作品発表されていますが、どの作品もすでに「ゲーム音楽」という枠をとっくに飛び越えて、現代のオーケストラ作品として高い評価を得るとともに、数多くの人に愛されるクラシック音楽となっています。

    それでは、楽曲分析です。今回は公演の第2部・前半3曲です。公演の第2部はファミコン時代のドラクエ(I〜IV)の楽曲からセレクションしてプログラムを構成し、「ドラゴンクエスト・クラシックス」と銘打たせていただきました。
    (数字はシリーズ番号・曲名はウェブサイト「すぎやまこういちの世界」の表記によります)

    ●序曲(I)
     「ドラクエ」ファンにはもうおなじみですね。この「ドラクエI」の序曲を読み解くキーワードは、ズヴァリ「古典」。
     この序曲はシリーズを通してさまざまな編曲がされていますが、「I」においては、ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)やW.A.モーツァルト(1756〜1791)といった「古典派」に属する作曲家のスタイルで作られています。
     1つにはそのオーケストレーション(編曲)。ホルンによるファンファーレのあとに、有名な主題が提示されます。他の序曲ではこの主題が金管楽器などで勇壮に演奏されますが、「I」で最初に使われるのは弦楽合奏のみ。ちょっと地味な感じもしますが、その響きは常に気品が漂い、このゲームの世界観をよく表現しているといえます。

     そして、一番の特徴であるのが「様式」です。シリーズのいろんな序曲を聴いている方にはよくわかるかと思いますが、この「I」だけは、他の序曲とちょっと違いますよね。これは「古典」のスタイルで書かれているため。
     具体的にいうと、他のシリーズの序曲は「序奏(ファンファーレ)」→「主題」→「主題の再現(繰り返し)」→「結尾(コーダ)」という構成になっています。しかしIの序曲だけは「序奏(ファンファーレ)」→「主題」→「展開(主題の発展)」→「主題の再現」→「コーダ(結尾)」という構成です。これは古典派の時代に確立された「ソナタ形式」という様式にみられる特徴で(序曲全体としては「ソナタ形式」ではないのですが)、この構成がIの序曲を「古典」と読み解く一番大きな要素です。また主題が長調であるのにたいして、展開が短調。この調性の変化もきわめて古典的でありながら旅立ちの高揚感を上げるのに一役買っていますね。

     さらにスケールを大きくした「主部の再現」。オーケストレーションを変化させて、スケールをアップさせるとともに、3連符を伴奏におくことでスピード感をつけています。その後は勇壮な「コーダ」。これはどのシリーズにも配置されているものですね。
     この「序曲」、シリーズによってバージョンはありますが、必要な要素のほぼ全てが最初の「I」で確立されているのがわかります。時代を経るごとに形を変えながらも連綿と引き継がれ、新たな魅力を放ちかつより愛されていく音楽の稀有な例であるともいえます。


    ●Love Song 探して(II)
    「I」が古典だったの対して、「II」はポップスの要素が取り入れられています。古いファンの方は、この曲に歌詞がつけられてゲームの挿入歌になっていたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
     一時はサックスが入ったりして、「80年代ポップス」の感覚が前面に出たアレンジもあるのですが、今回演奏するのは弦楽のみでつづられるバージョンです。弦楽といっても弓を一切使わず、「ピッツィカート(弦を指ではじく奏法)」のみで演奏されます。「ポンポン」というピッツィカート特有の音により、全体的に軽く楽しい楽曲に仕上がっています。

     オーケストラで使う弦楽器のピッツィカート奏法では、「音を一定音量で伸ばす」ことができません。そこで、この曲では伴奏における和声の変化を基本的にアルペジオ(分散和音)にすることによって、より一層この変化を明るくかつポップな形で見せることに成功しています。また、ピッツィカート奏法は音の粒ごとに強弱をつけることができるため、そこで見られる「強弱の駆け引き」が面白さのひとつでもあります。聞いていてとても楽しいことはもちろんですが、演奏しているほうにとってもこの変化がより体で感じることができるのは楽しいものです。


    ●世界をまわる(街〜ジパング〜ピラミッド〜村)(III)
    3つの種類の街の音楽にピラミッドの楽曲が加わったメドレー形式の曲。音楽で楽しむ諸国漫遊です。
     この「ドラクエIII」において、フルオーケストラがはじめて使われます。それもNHK交響楽団という国内最高レベルのオーケストラを手に入れたことによって、作曲者のすぎやま氏は自分の頭に鳴っている音を余すところなく表現するに至ったのでしょう。

     それゆえか「III」の組曲はオーケストラの表現技法が極めて効果的に使われていますが、その最たるものがこのメドレーの中にある「ジパング」です。「ジパング」とはもちろん「ニッポン」。この情景には日本の古典芸能の一つである「雅楽」を用いています。ヴァイオリン・フルート・オーボエ、ボンゴをそれぞれ雅楽の楽器に見立てているのです。フルートは龍笛(りゅうてき)・オーボエは篳篥(ひちりき)・ボンゴは鼓(つづみ)でしょうか。雅楽に欠かせない「笙(しょう)」は本来はオルガンでしょうが、ここではしょうがなく(?)ヴァイオリンにあてています。さらにここに弦を指板にたたきつける「バルトーク・ピッツィカート」という特殊奏法を低弦楽器に与え、より「みやび」な世界を表現しています。
     雅楽をオーケストラで表現したもののひとつに、近衛秀麿(1898〜1973)の「越天楽(えてんらく)」という作品があります。これは雅楽の同名の曲をオーケストラで表現したものですが、雅楽そのものなので、聞いた印象はちょっと難解なところがあります。しかしこの「ジパング」で素晴らしいのは雅楽の世界を表現しながらも、メロディラインが「西洋の語法」(=クラシック)を決して崩していないところ。ここに編曲の巧みさが加わって、曲そのものはしっかり「雅楽」でありながらも不思議と耳になじむ見事な「和洋折衷」を作り上げているのです。

     また、すぎやま氏の管弦楽技法の魅力のひとつが「同じメロディから違う情景を見せる」こと。このメドレーのすべての曲に見ることができます。たとえば「村」1つのメロディが最初はクラリネットで、2回目はトロンボーンで演奏されます。フレージングの違いもありますが、その演奏が見せる情景はまったく違ったものになってませんか?こんな風に聞き比べるのも楽しいですね。

    次回は、第2部の後半3曲についてお届けします!お楽しみ(?)に!


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