calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< April 2017 >>

categories

archives

【楽曲分析】もょょクラシック 第4回 〜かわいい坊や、私と一緒においで〜

0
    この「もょょクラシック」もちょっとご無沙汰してしまいました。いや、忙しかったんですよ。
    新作の小説を書くのに忙しくって・・・。ミリオンセラー期待されていますの、最新作の「西巣鴨ウェストゲートボール」(仮称)。
    そんな愚痴をこぼしている解説の石口イライラ(ニース在住)でございます。

    さて、楽曲解説。今回はドラクエVの「大魔王」です。もちろんラスボス戦で流れる音楽。
    通常、ドラクエのラスボス戦の音楽というのは、その恐怖感や威圧感を厚いオーケストレーションを使い、音の威圧感で表現する曲が多いように思いますが、このVの「大魔王」はある意味別な性格を持った曲です。
    いわゆる、あえて薄いオーケストレーションを使うことで、大魔王の恐怖や緊張感を表現しているといえましょう。

    冒頭、全管弦楽のアコードから、管弦楽曲としては珍しい「ティンパニの独奏」で幕を開けます。そのあと突然音楽は小さなリズムを刻み、ホルンによる主題がが表れます。不気味なメロディですがどこか美しいのが特徴でもあります。
    このホルンの主題、ソロ⇒二重奏⇒三重奏と声部が増えていきますが、常に音量はピアノ。小さな音量を保ちつつ声部だけが増えていくことで大魔王の姿が徐々にみえていくような表現がなされていますね。
    「暗黒の世界」の主題を引用したメロディ(Aとしましょう)がフルートによって奏された後に、この曲のもっとも重要なモティーフ(Bとします)がホルン・トランペット・木管という順番で交互に奏されます。上向きへの跳躍を多用した、不安定なメロディです。

    そして次のポイント、弦楽器によるフーガ。

    先ほど書いたAとBの巧みに組み合わせた複雑なリズム、最初にヴァイオリンで奏される上向きの跳躍音型が、続くヴィオラでは下向きの跳躍音型に変化する「ミラーリング」という技法が用いられています。
    何よりもその特徴は、「音の選び方」。各パートの音を見ていくと、もう脈絡がないというかなんというか。単独のパートだけに注目しているとわけのわからないとしか言いようがないのですが、これはいわゆる「十二音技法」と呼ばれるものに近いのではないかとみることができます。

    「十二音技法」とは、アルノルト・シェーンベルグ(1878〜1951)が確立した作曲技法で、ごくごく簡単に言うと「1オクターブの中にある12の音を均等に使って、調性の束縛から逃れる」作曲法です。このフーガでも、メロディでは同じ音をほとんど使わず、1オクターブの中にある12個の音を自在に組み合わせています。
    また、音の変化にも音程の変化をそのまま維持して全体の高さを変える「移高」という方法がとられているのも特徴。それに、ヴァイオリンからチェロ・コントラバスに現れる音型も基本のモティーフ以外はみなバラバラです。

    ・・・と柄にもなくまじめに書いていますが、一番すごいのはこれだけ小難しく面倒な仕掛けでめちゃくちゃな感じであっても、全体の統一感は全く崩さずに一つの「美しい音楽」を構成しているところ
    すぎやま氏の「音選び」のセンスの素晴らしさがこの組曲中、最もよく出ているところといえます。

    その後に最初のホルンの旋律の変奏形が、同じホルンによって奏された後に、再び主題へと戻っていきます。

    最後は、ティンパニ・バスドラム・スネアドラムによるパーカッションアンサンブルが表れます。
    メロディを刻むティンパニ、乾いたリズムを作るスネアドラム、地鳴りのようになるバスドラムの極大のアンサンブルはまさに大魔王の「断末魔」。
    最後に全管弦楽の一音で、大魔王は息絶えます。

    不気味な音楽の解説を書いていても、僕の目の前に今広がっているのは紺碧の地中海。
    断末魔のパーカッションの音に思いをはせつつも、フランス窓のわきで、シャンパングラスが鳴らす高い音が自分に似合うと改めて感じる、解説の石口イライラ(ニース在住)でした。



     タイトル出典:F.シューベルト作曲 歌曲「魔王」より

    【楽曲分析】もょょクラシック 第3回 〜最期の願い〜

    0
      「もょょクラシック」も第3回。来年4月に開催される「Premium Concert III」では、ドラクエVのほかに、アラカルトステージとして各ステージから選りすぐりの名曲たちを演奏します。。今回はそのアラカルトステージから解説いたします。

      解説はおなじみ(?)石口イライラv(^o⌒)-☆ がお送りいたします。

      ■ダンジョン〜塔〜幽霊船(III)
      ドラクエIIIのダンジョン系メドレーです。以前の解説にもありましたが、ドラクエIIIは初めてフルオーケストラを使用して演奏された組曲。また、日本最高レベルの実力を誇るNHK交響楽団を手に入れたことによって、すぎやま氏のオーケストレーションも効果的な技法がたくさん用いられています。

      この曲を読み解くキーワードは、ズヴァリ「半音階」

       冒頭から、上昇系の半音階による序奏、そのあとに主題が展開されます。アルト・フルート(普通のフルートよりも低い音がでます)による旋律は不気味ながらも美しいものですが、この旋律にもちょっとした仕掛けがあります。この不気味さを演出しているのが実は「半音階」。音の上下があるため普通に聞くとわかりにくいですが、この旋律の小節の頭の音を拾っていくと実は「半音階」に並んでいるんです。
      また、旋律もアルト・フルート⇒オーボエ⇒ヴァイオリンと展開していくことで、オーケストレーションで洞窟の奥の空間の広さも表現されていますね。

       続く「塔」。ホルンの導入から、チェロによる半音階の旋律が現れます。ここでも不気味な旋律の伴奏に薄いオーケストレーションを用いることで高所に吹く風なんかも感じることができますね。また、所々に7/8拍子の変形がはいることで、綱渡りの揺れや崩れかけた壁の不安定さを表現しています。だけど、この中にも「美しさ」が同居しているんです。

      そう、ここはシャンパーニュの草原にそびえたつ塔。何が起こるかわからない、傍らにはそんな不気味さや恐怖におびえる妻。だけど大丈夫、僕がついている。塔から見えるあのシャンパーニュのブドウ畑が僕たちを待っているこの困難を2人の愛で乗り越えてはるかに見えるシャンパーニュのブドウ畑でフランスパンのサンドウィッチと赤ワインで乾杯しようああどんな難敵も2人の愛の力の前にはかなわない!

      (コホン)

      そしてそして、曲はより現代的にかつ前衛的な響きの音楽「幽霊船」へ移っていきます。「半音階技法」が最もよく表れている曲です。まず、旋律の彩りには半音をぶつけ、緊張感のある響きを主体にして進んでいきます。また、ハーモニーを形作る伴奏が全くないことも特徴。あるのは常に規則的なリズムを刻むウッドブロックとハイハットだけ。規則的なリズムを用いて生命の色が全くない景色を作っています。
      このような和声的な緊張を主体にする中にも聞き苦しい点が全くないのもすぎやま氏の音楽。前衛的・無機的な音楽の中にも、どこかに血の通った願いも感じられます。

      それは、ゲームをやった方ならわかりますよね。愛です、愛。

      そして、最後の強烈な1音で、有機的なものをすべて断ち切ります。印象的に演奏されるこの音、何かの打楽器のようにも聞こえますが、これは弦楽器の特殊奏法です。弦を指板にたたきつける「バルトーク・ピッツィカート」という奏法がコントラバスによって演奏されているものです。(この奏法は「ジパング」にも出てきます)
      そのあとのフルートによる6連符、これも半音階技法によるものです。最後の魂が消えてなくなるような印象を残し、曲は閉じていきます。

      無機質な音楽の中にも感じられる有機的な力。冒険の中に潜む恐怖など、また音楽で感じてもらえればと思います。

      以上、解説の石口イライラv(^o⌒)-☆ でした。




      タイトル出典:G.ヴェルディ作曲 歌劇「運命の力」より

      【楽曲分析】もょょクラシック 第2回 「風と海の対話」

      0

         「もょょクラシック」第2回では、引き続き「もょもと交響楽団 Premium ConcertIII」で取り上げる、交響組曲「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」の曲を見ていきましょう。

         解説はいつもの通りワタクシ 石口イライラ(゚∇^*)  がお送りいたします。


         ■空飛ぶ絨毯〜大海原へ
        いわゆる「乗り物系」のメドレーです。前半が空を飛ぶ時の音楽「空飛ぶ絨毯」。音階の駆け上がりから、低弦のリズム伴奏に乗って木管楽器によって軽快で楽しいメロディが奏でられます。基本は4拍子ですが、途中に5拍子を挟むことでちょっと風にあおられたかのような「おっとっと」とした印象を与え、非常にうまくできたメロディです。

        余談ですが、シリーズを通してこの空飛ぶ乗り物系の音楽は、表現される乗り物によって非常にうまく拍子が使い分けられています。その最たる例がIVの「のどかな熱気球のたび」。
        木管四重奏によるアンサンブルにこれでもかというほどの変拍子を多用することで、気球という乗り物の不安定感を見事に表現しています。

        もう一つの特徴が、「1つの音が表現する情景の豊かさ」でしょうか。冒頭の駆け上がり後、高音域の持続音がヴァイオリンによって演奏されますが、このたった1つの音から乗り物の速さや風を切る感じ、風の温度、眼下に広がる雲の形や遥か下に見える景色などが見事なまでに見えてきます。

        この「1つの音だけの豊かな表現」はまさにすぎやま氏の「匠の技」がなせるもの。この技は「おおぞらをとぶ」(III)の冒頭にも印象的に使われているものです。
        この後も長い音符によるメロディが続き、そのあとに3連符による別な主題もさわやかに続き、乗り物がいまどんな状態にあるかを雄弁に語っていきます。

        推移部を経て、曲は後半の海の音楽「大海原へ」と展開していきます。前半のスピード感のある音楽とはうって変わって、息の長い音楽です。
        シリーズを通して、海の音楽はかなり形を変貌させていきます。IからIIIまでのワルツ系の音楽に対し、IV以降は雄大かつロマンティックな形式に変化しますね。
        この「大海原へ」も後者の分類に属するものですが、音楽が描く情景は穏やかなものです。

        そう、そこは穏やかで紺碧の地中海、晴れた朝にニースの港を旅立つ白い帆船。海岸からは街の人たちの「ボン・ボヤージュ!」の声が響き、力強く手を振り返すと傍らには愛する妻が。ごく自然に肩を抱く手にあわせて近づく妻の顔・・・朝の地中海に跳ね返るニースの太陽の輝きが二人を祝福するかのようです。


         穏やかで美しい主題がヴィオラとチェロによって奏でられ、弦楽器を主体に発展。フルートを中心にした木管セクションが彩りを添えます。そこからオーケストラ全体で主題を力強く再現していきますが、オーケストレーションは常に優しいパステル系の色彩感を感じさせるものです。
         これは、クロード・ドビュッシー(1862〜1918)に代表される印象派音楽の影響でしょうか。金管楽器の柔らかな音色をベースにし、木管楽器が細かなアンサンブルを作っていくことで雄大ながらも暖かみのある音楽に仕上がっています。

         曲はやがて帆船が遠ざかって行くかのように主題の断片を繰り返し、ホルンの和音に乗って地平線の彼方へ消えていきます。前半のさわやかな空と後半の穏やかな海。1つのメドレーの中で描かれる情景を楽しみながら、ぜひ皆さんも陽光輝くニースの地へ思いをはせてみてはいかがでしょうか。


        以上、解説の石口イライラ(゚∇^*)でした。


        タイトル出典:C.ドビュッシー作曲 交響詩「海」より


        【楽曲分析】もょょクラシック 第1回 「恋とはどんなものかしら」

        0

           みなさま、こんにちは。「もょょクラシック」のお時間がやってまいりました。
          ここでは、2014年4月29日に開催される「もょもと交響楽団 Premium ConcertIII」にて取り上げる、すぎやまこういち作曲「交響組曲 ドラゴンクエスト」の楽曲を解説致します。

           ただ、楽曲解説といっても曲の紹介ではございません。今回もょもと交響楽団が取り上げる楽曲がどんな情景を描いたものかはみなさんよく御存じのはず。たとえば、「結婚ワルツってゲームの結婚式の時に流れるんですよ」との解説をしても

           


          「知ってますが何か??」


          で終わってしまいますよね。

           
          そこで、この「もょょクラシック」では、作曲技法やオーケストラの技法から「ドラゴンクエスト」の音楽を紐解いていきます。解説担当は、ワタクシ石口イライラ☆(ペンネーム)でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

           
           さて、この交響組曲「ドラゴンクエスト」は、皆様ご存じのとおり、国民的人気のRPG「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽を作曲者のすぎやまこういち氏自身がフルオーケストラのための組曲に編纂したものです。現在までにゲームのタイトルに合わせて10作品作られていますが、いずれもゲーム音楽としてのみならず、現代のオーケストラ音楽としての側面もあります。録音も、NHK交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、そして東京都交響楽団と世界トップレベルのプロ・オーケストラが手掛け、高い評価を得ているものです。

          それでは、楽曲解説です。過去2回のコンサートではアラカルト、もしくは抜粋の演目でしたが、今回のもょもと交響楽団では「交響組曲ドラゴンクエストV 天空の花嫁」全曲を取り上げます。

           ドラクエVは、ご存知のとおり、「天空シリーズ」の1作品。実は「天空シリーズ」の楽曲というのは、シリーズのストーリーに合わせ、ある程度「音楽の色彩」を統一して書かれているんです。他の作品(IV・VI)では、主人公の悲惨な生い立ちや悲し目のストーリーからどちらかというと「寒色」の色彩を感じますが、このVは主人公の人生波乱万丈っぷりは飛びぬけてますが、ストーリーの柱に「結婚」や「家族」があるためでしょうか。戦闘曲や悲しい曲を含めて、パステル系の「暖色」な色彩を感じる組曲になっています。

           ■愛の旋律(V)
           愛ってなんでしょう。胸を焦がすほど熱くしたり、急に寒く不安にしたり。晩秋のモンマルトルの丘に吹く夜風のように気まぐれなもの。愛がもたらす心の揺れ動きを見事に描いた小品です。

           この曲の特徴は「転調の妙」「楽器の扱い方」「旋律の比率」での表現でしょうか。
          音楽のメロディには「調性」というものがあります。ハ長調とかニ短調とかのことですね。そしてこの調性が変わることを「転調」といいます。この「転調の妙」がよく出ているのが冒頭の主題。聴いている限りは美しい音楽ですが、わずか8小節のメロディで、5回の転調があらわれています。それも、前後の関係が薄い調性への変化(=安定しない)で、不安定さを作っています。

           もう一つの特徴が「楽器の扱い方」。この曲の冒頭のソロを奏でるのはフルートです。フルートといえば木管楽器でも高音を担う楽器でその華やかな音色が魅力の楽器です。冒頭の旋律は、通常フルートではあまり演奏されない音域で書かれていますが、ここではあえてあまり使わないフルートの「最低音域」をあてることで「愛を思う人物像」を表現することに成功しています。

           次の繰り返しでは、ヴァイオリン・ソロによる演奏。同じメロディを同じ音域で書かれていますが、ヴァイオリンの艶のある低音の響きから見える人物像は全く違うキャラクターですよね。そう、前者がプロヴァンスの田舎娘なら、後者は華やかなパリジェンヌ。同じメロディでも演奏させる楽器の特性を利用して表現する人物像を全く違うものにすることに成功しているといえます。

           そのあとに奏でられる第2主題。ヴァイオリンの合奏によって流れる主旋律とチェロを主体にした対旋律です。通常のオーケストレーションでは主旋律と対旋律の比率は主旋律に多く充てられますが、ここでは完全な1:1に仕掛けているのがわかるかと思います。対旋律も、主旋律の合間を埋めるように動きを持たせていくことで、愛を思う女性と男性のようにお互いに意識しながらもすれ違うように、そしてお互いが音楽的に関連することによって一つの音楽としての統一感を持たせている仕掛けになっています。

           短いながら、作曲技法とオーケストレーションの技術を見事に使ったこの「愛の旋律」。

          こんなことを知りながらゲームの場面を思い出して聴いてみると、また違った形に聞こえるかもしれません。

           

          以上、解説の石口イライラ☆(ペンネーム)がお送りしました。


          タイトル出典:W.A.モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」より
           


          【楽曲分析】もょ響アワー・最終回

          0

             皆様こんにちは、毎回おしゃれな駄洒落をイメージしつつも、自爆の末にマヒャド級ダジャレオヤヂの地位にまで落ちぶれた解説担当のサイファ(3×歳独身)です。さあ皆さんご一緒にどーぞフトンがフっとんだぁ!

            楽曲解説もいよいよ最終回。残すはラストバトルとその先に続くエンディングを残すのみとなりました。


             ●魔王との対決
            今まで、「ライトモティーフ」という言葉についていろんな曲の分析で書いていきました。このライトモティーフは「悪のモティーフ」というくらいなだけに、戦闘や洞窟など悪しきものが現れるシーンで使われていることは、以前も書いたかと思います。
             このドラゴンクエストの世界において最後に戦うのが諸悪の根源である「魔王」。この悪の象徴を描くにあたり、「悪のモティーフ」を使用することは当然の流れとはいえます。最後の死闘にすぎやま氏が使用したのはライトモティーフ技法の集大成。この曲の何より特筆すべきは、旋律がすべてライトモティーフとその変形のみで作られていることに尽きます。
             冒頭、全管弦楽によって極太のライトモティーフが序奏として演奏され、続いて重い足音のような低音に乗って、旋律が現れてきます。この旋律はもちろん「悪のモティーフ」そのものです。変形の仕方も基本的なリズム変奏はもちろんのこと、モティーフの1音を1オクターブ上げたりもしています。この「1音だけオクターブあげる」処理は、まるで鏡に映したかのように「同じだけど何か違う、でも同じ」な印象を与え、ここでもすぎやま氏の「音選び」の感性が生きていると感じさせます。
             オーケストレーションにおいても高音域・中音域・低音域の使い分けが非常に見事です。とぐろを巻くような低音、鋭く突き刺すような高音。同じフレーズでも与える印象がまったく違いますよね。
            また、この曲で特徴があるのが伴奏。基本的な4分の4拍子で音形も単純でありながらも、強烈なアクセントを伴った独特の荒々しい和音の構成は「原始主義」のテイスト。
             音楽での「原始主義」とは、簡単に言うと民族性の強い音楽をさらに荒々しく、感情の赴くまま(=原始的に)に表現した音楽とでもいえるでしょうか。この作風の作品は決して多くはないですが、もっとも有名なのがイゴール・ストラヴィンスキー(1882〜1971)のバレエ音楽「春の祭典」です。複雑な不協和音とリズムで、初演の際にけが人が出るほどの大騒ぎを起こした作品としても知られていますが、現在ではオーケストラ音楽の重要なレパートリーの1つになっています。
             「魔王との対決」においては、魔王がその悪の本能のままに暴れ狂う様子を「原始主義」の響きにのせています。しかし、「不協和」を伴った原始的な音でも決して不快感を招かない(むしろ、その強烈さにぞくぞくする)のはこの曲でも前出の「春の祭典」においても共通するところです。
             一瞬の空白の後に、非常に冷たい伴奏に乗って、新たなフレーズが現れます。ファゴットのソロが長く続きますが、このソロももちろん「悪のモティーフ」の変形です。
             ズヴァリ!これが、すぎやま氏の見せるモティーフ技法の最終進化形。このような自由な独奏を「カデンツァ」といいますが、たった4つの音からなるモティーフをこういう形に進化させるアイディアには本当に驚嘆させられます。
             再び音楽は最初の主題へ。最後は全管弦楽で「悪のモティーフ」が高らかに演奏され、曲を閉じます。

            ●時の子守唄
             普通、こういうRPGのエンディング曲というのは、華やかなファンファーレや壮大な序奏からはじまり喜びにあふれた音楽が展開されるものなのでしょうが、この曲は最初からどうも「なんかエンディングっぽくない・・・」(←筆者個人的感想)と思いましたが、曲が進むにつれて展開されるのはドラクエらしい壮大なフィナーレ。今まで私たちが第3部で演奏するドラクエVIの曲についていろいろ見てきましたが、前出の「魔王との対決」がライトモティーフ技法の集大成なら、この「ドラクエVI」という組曲に流れる美学の粋を集めたのがこのエンディング曲「時の子守唄」です。
             冒頭の序奏に流れる和音から何か煮え切らないというか不安定です。通常、きれいに解決されている和音の基本は「ド−ミ−ソ−ド」ですが、これは、なぜか左記の例でいう「ソ」にあたる音(第5音といいます)が半音下がっているため。家に例えれば、2階部分がなんかずれて建てられているように、安全ではあるが「なんか大丈夫?」的な印象を与えてしまうのですが、これも「音選びのセンス」がなせる技。序奏の序奏ともいえる箇所でわざとこのような不安定なものをいれることで、その後の序奏の展開を効果的に見せています。
             その後に続く導入の楽句は、2つの音+3つの音のフレーズの組み合わせ(実際には、最初に1つ休符がありますが)。それがやがて「2+3+4」になり、繰り返されてさらに音の長さが倍になり、断固とした意思を持ったクレシェンドをすることによって、きわめてスケールの大きな序奏ができあがります。 この「2+3」というリズムはアントン・ブルックナー(1824〜1896)の作品にみられるもので(ブルックナー・リズムと言われます)、有名な交響曲第4番「ロマンティック」などに登場しています。また、同じ音形を繰り返して音楽を盛り上げていく手法もブルックナーが得意としたやり方です。
             そして現れる主題。チェロと(途中から)ホルンによって奏でられる主題はどこまでも美しくせつなくやさしい歌。「エーゲ海に船出して」でも書いたすぎやま氏の「歌の美しさ」がここでも見事に示されています。
             その後、曲は3拍子の自由な形式に変わり、ヴァイオリンとハープの伴奏にのって、トランペット、続いてイングリッシュ・ホルンによってが新たな旋律が奏されます。どことなく割り切れない印象を与えますが、この旋律は3拍子の中に4連符が入っているため。
             この「割り切れない不安定さ」がこの曲の美しさのヒミツのひとつとも言えます。その後にオーボエの独奏で主題が現れ美しくかつデリケートに曲が進んでいきます。
             
             一瞬の沈黙の後に激しい低音の伴奏に乗ってまた序奏が再現されていきます。この序奏の再現、最初は「2+3」だけだったのが、今度は「2+3」のあとに「3+2」になっていることも面白いところです。(これも前出のブルックナーが得意とした技法のひとつ)。
             そして全管弦楽で主題が再現されます。美しさにさらに壮大さが加わり、まさに曲の眼目ともいえるところです。さらに序奏に現れた「2+3」のリズムがたたきつけるような和音を伴って奏され、最後のクライマックスを築き上げていきます。そこで一瞬の総休止。
             曲は一転してガラス細工のような繊細さをもって、だんだん小さく消え入るように進んでいきます。最後の5小節は主音(この場合は「ソ」)の音に第3音(「シ♭」)を入れるだけ。たった2つの音だけで作られる音楽が、ディミヌエンド(だんだん小さくする)しながらの繰り返されるだけなのですが、手のひらから美しい砂がさらさらと零れ落ちるような効果を作りあげています。
             
             そして、最後の最後。弦楽器によるごく小さな1音ですべてを解決させて曲を閉じます。


             さて、ここまで今回私たちが演奏するドラゴンクエストの楽曲13曲について見てまいりました。いかがでしたでしょうか。「ゲーム音楽」というジャンルも、こういう分析的な視点で見るとさまざまな発見があることに、筆者自身も驚いています。毎回サムい駄洒落を入れるのが一番苦労した勉強させていただく思いで書かせていただきました。
             また、ただの音楽好きなアマチュアプレイヤーにすぎないの筆者のにわかな知識からみても、このドラクエの音楽を生み出したすぎやまこういち先生が、その才能だけではなく古今東西のいろいろな音楽を勉強された上で作曲されているかが理解できました。ゆえに「大好き」だけではない。その音楽に心からの敬意と感謝を持って、演奏していかなければいけないなと改めて襟を正す気持ちにもなっております。

             今回の私たちの冒険は、このブログを書いている時点(平成23年6月中旬)ではまだ始まりの序曲です。限られた時間の活動を通して、どんな音楽を作ることができるのか。筆者も楽しみなところです。そして、冒険の仲間たちも弦楽器を中心にまだまだ募集をしております!
             何よりも、この「楽曲分析」が少しでも皆様がこの「ドラクエ」の交響組曲をより好きになれる、新たな発見を持って聴いていただける一助になるならばこれに勝る喜びはありません。

             なお、一連の「楽曲分析」に当たってはいくつかのウェブサイトを参照させていただきました。


             さあ、もょもと交響楽団の大冒険はいよいよはじまります!


            【楽曲分析】もょ響アワー・第4回

            0

              皆さんこんにちは。不定期連載「もょ響アワー」のお時間でございます。解説はいつものとおりもょもとのかなり寒いだじゃれおっさん・サイファが担当いたします。

               先月、mixi内のコミュニティ「マジでドラクエ演奏するから俺ら」による「合奏イベント」が行われました。きわめて限られた時間による合奏オフですが、非常に質の高い合奏イベントとなり、参加者の皆さん楽しいひと時をすごしました。「限られた時間の中でいい音楽を追求する楽しさ」を大好きな曲でやれることが本当に幸せに感じます。

              さあ、楽曲分析も4回目。今回は「ドラクエVI」の中から3曲です。いよいよこの組曲の最大の特色である「ライトモティーフ」が登場します。復習になりますが、「ライトモティーフ」というのは「短い主題」。ドラクエVIでは、「悪のモティーフ」という主題が戦闘曲や洞窟・塔などの音楽に使われています。

              ● 勇気ある戦い〜敢然と立ち向かう
               バトルメドレーの曲です。4音から成る短い「悪のモティーフ」がいろいろな形を見せていきます。最初の曲である「勇気ある戦い」は半音階で下降していく序奏を経て、最初のテーマがトランペットで奏でられます。ライトモティーフを短くした変形を2回繰り返していますが、2回目は最後の音を半音上げる処理を施し、この後の音楽への注意を喚起していますね。
               音楽も旋律的でありながら非常に緊張感があるものですが、この緊張感を演出している陰の立役者がチェロとコントラバスによって演奏されているベースライン。通常、和音の変化があれば最も下で和音を支える重要な低音が動いていくのは自明の理ですよね。しかし、よく聞くとこの部分では冒頭から約16小節間低音部に変化がないことがわかります。このように同じ音がずっと続く低音の形を「オルゲルプンクト」(持続低音)といい、これが聞く人に無機質な印象を与えることによって戦闘の緊張感や恐怖感をより一層高めているわけです。
               続く部分もライトモティーフを主体としていきますが、今度は伴奏系が細かい音形に変わり、さらにモティーフを短い形に変形させ立て続けにつなげていくことで、スピード感のある音楽を作ります。そのスピード感が最高潮に達したところでいきなりその流れが消え、ロングトーンが表れます。次へつなぐだけの橋渡しにしかすぎないようにに見えるのですが・・・・。
               ズヴァリ!ここがすぎやま氏の「音選びのセンス」が最もよく出ているところなのです。ここでは半音ずつの音の開きを4つ積み重ねています。これ、実際にやるとわかるのですが、ためしにピアノで半音階を4つ同時(ここではミ・ファ・ファ#・ソ)に鳴らしてみましょう。
               ・・・めちゃくちゃですね(笑)。普通にやれば音楽にすらならないところですが、すぎやま氏は最高音(ミ)を持続させることで「緊迫感をつくり」、残る3つの半音階を広い音域にちりばめ、さらにメロディックな動きを与えることで「予想がつかない展開」を演出する効果を作り上げています。ナレーションをつけるなら「勇者VSスライムのバトル展開予測不能っ!いったいどうなってしまうのか〜っ!!!」(←「ガチンコ!ファイトバトル」風で)というところでしょうか。最後にこの「予測不能」を最初の低音部に関連する音(属音)にもってくることで一気にまとめあげます。ここで「続くっ!!!」となる仕掛けです。
               そして、続いた「敢然と立ち向かう」では、全体を3連符に支配させた曲に変わります。ライトモティーフもすべて3連符を主体とした形に変形させていますね。さらにバトルの緊迫感が高まっていますが、これが3連符を多用した最大の効果ではないでしょうか。「勇気ある戦い」が、数学的に見れば「割り切れる」のに対して、この3連符の「割り切れなさ」が音楽の緊張感をより強く与えていると思います。

               
              ● 奇蹟のオカリナ〜神に祈りを〜奇蹟のオカリナ
              ちょっと変わった構成の曲です。「奇蹟のオカリナ」は短い主題提示と終結を兼ねており、主部はこの「奇蹟のオカリナ」を展開させた「神に祈りを」になります。ここでは主に「神に祈りを」について見ていきます。
               この曲の形式はいわゆる「フーガ」と呼ばれるもの。「フーガ(遁走曲)」とは極めて大ざっぱに言えばある旋律が奏でられたあとに別な声部が同じ旋律を演奏する・・・といったように「1つの旋律が追いかけっこする」曲です。技法自体はかなり古くから存在していて、J.S.バッハ(1685〜1750)がその大家として知られています。「フーガ」には厳密なお約束事がかなりたくさんあり、この曲は必ずしも音楽学的に正しい「フーガ」の形式ではないのですが、清冽な祈りを表現するに十分な効果が出ています。
               まず、「奇蹟のオカリナ」のメロディがフルートのソロによって演奏されます。その後すぐに「神に祈りを」からフーガが始まっていきますがここでまず注目したいのがこの部分の楽器構成。木管楽器によるアンサンブルですが、ここになぜか「チューバ」が加わっています。ご存知のようにこのチューバという楽器は金管楽器系の最低音部を担うもの。この楽器にはオーケストラを支えるにふさわしいどっしりとした厚みのある音が出る反面、音の輪郭が見えにくいという欠点があります。木管楽器の中でチューバをこだまのように響かせるオーケストレーションは、この楽器上の欠点を逆手に取ることから生まれたアイディアでしょう。フーガの技法と相乗してこの曲想をより清潔に見せる効果を上げています。まあ、チューバがこういう役割を与えられることは少ないので、奏者はこのフーガの部分をふがふが言いながら吹くことになるとは思います(笑)
               続いて、同じメロディが弦楽合奏に登場。最後に「奇蹟のオカリナ」のメロディが現れて曲を閉じます。


              ● 暗闇にひびく足音〜ラストダンジョン〜暗闇にひびく足音
              洞窟メドレーの曲です。これも通常ダンジョンの曲「暗闇にひびく足音」を最初と最後に持ってきています。
               冒頭、ライトモティーフを変形させた序奏をつけて曲が始まります。この曲の主題はライトモティーフとの関連はなく、独立した主題です。弦楽器の細かい音形を伴奏に用い、ひんやりとした色彩で曲を進めていきます。途中に現れる半音階の走句も印象に残ります。最初は単純に半音ずつ下げていき、次は3つの音のかたまりを半音ずつ下げていくという、同じ半音階の下降形にも工夫を見せているのも面白いところです。
               続く、「ラストダンジョン」。本来、すぎやま氏の持つ音楽は非常にメロディックで聞きやすいのですが、ここではかなり前衛的な響きが使われています。しかし、「前衛的」であっても「わかりにくい」わけでは決してないのがすぎやま流なのでしょう。前衛といっても進化しすぎて筆者のような凡人には理解不能な「ゲンダイオンガク」ではなく、前衛的な響きを持たせながらも「クラシカルな美」を失わないところはさすがだと思います。
               この曲にはメロディらしいものは存在しません。半音階を必ず含む不協和な和音が弦楽器によって奏され、その間に独白めいたリズムが現れる、ちょっと独特な形です。この弦楽器に現れる和音も、きちんと音を選んで作られているのでしょう。ハーモニーが非常に繊細なもので、ここでもすぎやま氏のハーモニー感覚の繊細さがみえるものです。ところどころに現れる独白も、ちゃんとライトモティーフを変形させて作られています。
               この後また「暗闇にひびく足音」が繰り返されます。最後に奏でられる和音も、シンプルながら非常に緊張感を持たせていますね。

              音楽はいよいよラストバトルへ。


              【楽曲分析】もょ響アワー・第3回

              0

                みなさま、こんにちは。もょもと交響楽団のドラクエ楽曲分析、第3回目です。解説はいつものとおりちょっと洒落好きおじさんお兄さん・サイファが担当いたします。

                さあ、楽曲解説は第3部に入っていきます!

                 第3部では、「ドラゴンクエストVI」より、選りすぐりの曲プログラミングいたしました。一昨年の演奏会では感想と一緒に本当に多くのリクエストをいただきましたが、その中でも一番多かったのがこの「VI」の楽曲。ドラクエVIの楽曲は暗めの曲が多いため華やかさには欠けますが、音楽的な完成度はきわめて高く、それゆえに演奏の難易度も高い組曲です。
                 余談ですが、IV以降の交響組曲「ドラゴンクエスト」は組曲ごとにゲームのストーリーやコンセプトにあわせて全体的な色彩感をある程度統一して構成されています。この「VI」はもちろん、「IV」もどちらかというと若干冷たい感じがする組曲です。逆にモンスターを仲間にすることができたり「結婚」や「家族」がストーリーの柱となる「V」は、戦闘曲なども含め非常に暖かみのある色彩が感じられます。

                この「ドラクエVI」の組曲を読み解くキーワードは2つ。
                ズヴァリ「ライトモティーフ」「変奏技法」です。

                ★ライトモティーフ
                 直訳すると「短い主題」。ある人物や状況を表す短いメロディ(長くても2小節くらい)を、音程やリズム、オーケストレーションを変化させて曲中にちりばめることで、感情や状況の変化を表しながら曲中の統一感を出していく作曲技法です。クラシック音楽ではリヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)がその超大作楽劇「ニーベルングの指輪」(全部演奏するのに4日間かかる!)で確立した技法ですが、原型はその前の時代からあり、有名なところではエクトル・ベルリオーズ(1803〜1869)の「幻想交響曲」にこのライトモティーフの先例をみることができます(全曲を通して表れる「恋人の主題」)。
                  「ドラクエVI」では4つの音からなる「悪のモティーフ」というライトモティーフが、戦闘や洞窟などの音楽に使用されています。また、前回でお話した「IIの戦闘の音楽はこのVIと深いかかわりがある」の答えがここにあります。第2部で私たちが演奏する「戦い」の主題はこの「ライトモティーフ」とよく似ていますよね。もちろん「II」が作曲された時点でこのような展開があるとは想定されて作られてはいないでしょうが、私たちもょもと交響楽団のプログラミングには、こんなところにもこだわりをもって組まれているのです。
                 ちなみに、ライトモティーフの技法は「ドラクエIII」でも使用されています。VIほどわかりやすくはないものの、曲の統一感のみならず、音楽的にロト三部作を1つにまとめあげることにも成功している見事な音楽的アイディアです。どこか知りたい人はぜひもょもと交響楽団もしくはすけさん吹奏楽団に参加してくださいね! (笑)すけさん吹奏楽団は今年の夏から募集を開始します!

                ★変奏技法
                 あるメロディのリズム・拍子・調性を変えたり、飾りをつけるなどの変化をさせて違う音楽を作る作曲技法です。「ヴァリエーション」ともいいます。変奏曲と名のつく曲はオーケストラの作品だけでもたくさんありますが、クラシック音楽の作曲家でこの変奏曲の大家といえば、L.V.ベートーヴェン(1770〜1827)。有名な交響曲第5番「運命」や第9番(いわゆる「第九」)にもこの変奏技法が使われています。
                 すぎやま氏はこの「変奏曲」の達人でもあり、シリーズのほかの楽曲でもこの「変奏技法」を巧みに使っています。どこか知りたい人はぜひもょ(以下省略)!

                ●エーゲ海に船出して
                 タイトルの通り、航海をするときに流れる音楽です。
                 I〜IIIまでのロトシリーズと比べて、最も曲想が変わったのが「海」の音楽です(こう書いちゃうと「Iに海の曲はないだろ!」とか言われるんですよね)。ロトシリーズではワルツのリズムに乗って楽しくものどかな雰囲気、どんぶらこっこという印象でした。しかし、IV以降の海の音楽ではこれが一変。IVの「海図を広げて」からは雄大な音楽が展開されるようになりました。この「エーゲ海に船出して」もその流れを汲むもので、曲想はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)やセルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)に代表される19世紀ロシア・ロマン派の楽曲を思わせます。しかし、すぎやま氏はロシア・ロマン派の特徴であるスケールの大きさを残しながら、これにつきものの「土臭さ」をとことん洗練させ、美しさだけを際だたせました。そのスケールの大きさと美しさの前にはチャイコフスキーもラ フマニノフも裸足で逃げ出すと思われます(笑)。

                 冒頭、ハープにカデンツァ(自由な独奏)風の独奏で曲が始まります。2小節間の短いものですが、素晴らしく幻想的で聞いている人のハートをがっちりつかんでしまいます。その後に弦楽器で奏でられる美しい美しいメロディ。最初から最後までひたすら素晴らしい「歌」の奔流で曲が進んでいきます。第2部の「おおぞらをとぶ」同様、この曲のメロディ以外のパートも非常に旋律的で、伴奏や対旋律というよりも、歌の1パートとしての役割を持たせているのも特徴のひとつです。オーケストレーションも豪華な輝きを演出するトランペットやシンバルなどが一切使われず、全体的に柔らかい手触りで統一されています。管弦楽曲ながら、全体的に「多声部で作られた大規模な歌曲」の印象が強く、ここでもすぎやま氏の賞賛されるべき才能の1つである「メロディの繊細さ」が際立った曲であるといえましょう。

                ●木洩れ日の中で〜ハッピーハミング〜ぬくもりの里に〜フォークダンス〜木洩れ日の中で
                 最初で述べた「変奏技法」が使われているのがこの曲です。変奏技法を使って書かれた曲のことを「変奏曲」といいます。最初に「主題提示」があり、「第1・第2・・・・・」と何個かの変奏を経た後に最後に「コーダ」(主題が再現されることが多い)というのが基本的な「変奏曲」の構成。この曲はタイトルを見ると街の音楽メドレーなのですが、小規模ながらも前述した「変奏曲」の形式にのっとって書かれていますので、メドレーであるとともに「街の変奏曲」といった趣きもある楽しい曲です。

                 弦楽器による2小節の序奏のあとにピッコロによって街のメロディが奏でられ、続いてヴァイオリンによって新たな主題が演奏されます。明るい朝の光を思わせる「木洩れ日の中で」ですが、前述した変奏曲の形式から見ると、ここで演奏された2つのメロディが変奏されていくことからこの「木洩れ日の中で」が変奏曲の「主題提示」の役割を果たしていることがわかります。

                 つづく「ハッピーハミング」が第1変奏。通常、第1変奏では大きく形を変えないことが多いのですが、ここですぎやま氏は曲想のまったく違うジャズ風の変奏曲を持ってきました。金管楽器を主体にした華やかなオーケストレーションもジャズの味付け。カジノの音楽らしく、ゴージャスで思わず指を鳴らしたくなるようなノリのいい音楽ですが、よく聞くとちゃあんと最初の「木洩れ日の中で」のメロディに沿って書かれていることがわかるかと思います。街メドレーにカジノを入れる構成はIVやVでも使われていますが、「変奏曲」という形式を取り入れていることでより進化したものといえるでしょう。
                 
                そのあとの「ぬくもりの里に」は変奏曲にはなっていません。しかし最初の「木洩れ日の中で」との有機的なつながりを感じることはでき、変奏と変奏の間の「間奏曲」としてみることができると思います。ここで注目したいのは転調のうまさ。16分音符が上下して一気に転調していきますが、場面転換しているようでとても面白いものです。

                 お次の「フォークダンス」が第2変奏にあたります。3拍子の舞曲風変奏曲です。主題よりもアレンジがシンプルになり、ちょっとひなびた印象を与える変奏曲ですが、前2つにちょっと凝ったアレンジや転調が使われていますので、シンプルな曲で耳休め・・・といったところでしょうか。このあとに、最初の「木洩れ日の中で」が再び登場。これが最後の「コーダ」の部分になります。
                 また、最初の序奏部分が曲と曲のつなぎ目になっているところにも注目です。この序奏が、転調の形を見せながらメドレー(変奏曲)をつないでいきます。曲のはしを使って橋渡しをさせているのも面白いところです。

                次回は第3部の中間3曲についてです。いよいよ「ライトモティーフ」が登場します。


                【楽曲分析】もょ響アワー・第2回

                0

                  みなさま、こんにちは。 もょもと交響楽団のドラクエ楽曲分析の第2回目です。いつものとおりアヤしいステキな解説お兄さんこと、わたくしサイファが担当いたします。

                  第2回では、第2部「ドラゴンクエスト・クラシックス」で演奏する楽曲の後半3曲について分析していきたいと思います。

                  ●おおぞらをとぶ(III)
                  シリーズ屈指の名曲とも言われ、単独のファンも多い曲です。本来ならこういう曲に分析を加えるのはもう野暮なのですが・・・
                  全体の楽曲構成も基本的にA-B-Aという基本的なもので、作曲技法にもハーモニーの構成にも特別なものは一切使われていません。分析という面から見れば目を引く技法や素材は正直何もない(笑)のです。しかし、この曲は作曲者すぎやまこういち氏の持つ数多くの音楽的才能の中でも、ズヴァリ!メロディに対する「アイディアの豊富さ」がもっとも見事に発揮されている作品でもあると思います。また、それを奏させるオーケストレーションも群を抜いてすばらしいものです。

                   これがもっとも如実に示されているのがこの曲の冒頭です。旋律に使われているのは、たったの1音!そしてこの部分を構成している楽器はフルート1本とハープ1本だけです。「旋律」も「楽器使用」も極限までムダをそぎ落としたものですが、筆舌に尽くしがたい魅力をもたせるだけでなく、そのメロディの中に信じられないほど多くの物語をこめることができるのはさすがに「匠の技」。本当にシンプルなものですが聞く人の心をつかんで離しません。そのメロディがフルートからオーボエへ、さらには弦楽器を主体とした管弦楽に引き継がれていきます。今度はメロディラインこそ変えないものの打楽器を中心とした楽器群を使って厚みを与えていき、さらにホルンによる雄大なオブリガード(対旋律)をつけています。ある意味「お約束」的な展開ですが、これが旋律から見える世界を劇的に大きくさせていますね。

                   続く中間部は自由な形式で幻想曲風に展開。その後に再び表れる主題では、旋律こそ最初と同じ楽器構成ですが、弦楽器のトレモロ(弓を細かく動かす)奏法による伴奏を加えています。
                   特別な技法は使わないまでも、「メロディのアイディア」そして「楽器編成の繊細さ」の2つがこの曲の真価かなと。ファンの間では「神曲」とまで言われ、特別な思い入れを抱く方も多いといわれるこの「おおぞらをとぶ」。そのヒミツはこんなところにあるのかもしれません。


                  ●戦い〜死を賭して(II)
                   空気が一転、魔物たちとの戦いのメドレーです。短い序奏の後、ホルンによってテーマが奏でられます。激しい戦いを想起させるこの旋律、実はこのコンサートの「第3部」で演奏する曲たちと非常に深いかかわりがあります!(これについては、第3部の楽曲分析で見ていきます。「VI」の組曲のCD持っている人はちょっと注意して聞いてみてくださいね)。続いての部分も戦いの剣戟を思わせる楽器のやり取りが続きますが、ここで非常にトリッキーな技が。ここでは、曲の冒頭にホルンで示されたテーマを短くパーツ化し、構造を変えて巧みに組み合わせることによって1つのメロディを構成させているのです。ひとつ間違えれば収拾がつかなくなりかねないのですが、これをごく自然にまとめあげ、おまけに曲の疾走感を演出する。このあたりのバランス感覚は本当に見事だと思います。
                   
                   間奏をはさんでメドレーはラストボスの音楽へ。同じ「戦い」でも状況は一変します。前半では音楽の流れにスピード感を持たせていましたが、ここでは逆に一音ごとに重さを与えるようにテンポを遅くしたり、四分音符中心のフレーズに変えています。オーケストレーションにおいても伴奏を受け持つ低音楽器系のハーモニーに厚みを与え、スポットを当てています。途中低弦楽器に見られる半音進行のフレーズも非常に効果的です。真逆の対比を与えつなげることで、同じテーマでまったく違う性格を表現している好例でもありますね。
                   
                   余談ですが、我らがもょもと交響楽団の指揮者・田中氏はこういったボス系の音楽の解釈が非常に素晴らしいです。田中氏の魅力であるボスっぽい外見熱いタクトが振り出すIIのラスボス・シドーの音楽はこのプログラムでも聞きどころのひとつ。筆者もプレイヤーの1人として実際の合奏ではどんな指導、解釈をしてくださるのか楽しみなところでもあります。


                  ●勇者の故郷〜馬車のマーチ(IV)
                  フィールドのメドレー曲です。弦楽器とハープによる非常に美しい序奏の後に、フルートとオーボエ(2回目はホルン)で旋律が演奏されます。物悲しく印象的なメロディですが、面白いなと思うところもあります。
                   それは「同じ音形を4回繰り返している」こと。実はこの「4回繰り返す」はメロディが冗長になるという理由で使われないことが多いのです。
                   この例にモーツァルトの「交響曲第40番」の1楽章冒頭を挙げてみます(大変有名な曲なので、クラシックは苦手という方も聞けばすぐにわかると思います。興味のある人は検索してみてくださいね)。モーツァルトは同じ音形を3回までは繰り返すまでも、4回目は冗長になるのを避けるためか違った音形でまとめています。対して「勇者の故郷」ではこの「4回」を使っていますが、決して冗長ではないですよね。フレージングを長く取ることで、IVの勇者が背負った運命の重さや深さが美しさとともに表現できていると筆者は思います。
                   
                   この後に続く「馬車のマーチ」。マーチとありますが、トランペットによって奏でられるメロディの形はどちらかというと古典的なファンファーレに近いものです。ここでは、伴奏につける弦楽器の走句が非常に印象的です。
                   そして、この2つのメドレーに共通しているのが「グリッサンド」です。グリッサンドとは、音を移動するときに区切らず、滑らせて音程を変えること。前半では、弦楽器によって演奏され、物悲しいメロディをより感傷的に演出しています。後半は・・・もういうまでもありませんよね。全管弦楽によって演奏されるマーチのクライマックス。トロンボーンによる強烈なグリッサンドの合いの手が、演奏者にもお客様にもアドレナリンの分泌を大いに促し、冒険の興奮をさらに高めていきます。ここで見られるように、同じ技法からまったく違った性格を引き出すのもすぎやま氏お得意の技。曲の最後に1つグリッサンドを聞かせるのも全体の統一感を持たせる効果があります。

                  第3回は、演奏会第3部で取り上げる「ドラゴンクエストVI」の楽曲について書いていきます。音楽的にも進化したVIの音楽。これも分析していくととても面白いものです。


                  【楽曲分析】もょ響アワー・第1回

                  0

                    皆さんこんばんは。「もょ響アワー」解説担当(?)のサイファと申します。公式ブログ開設にあたり、「楽曲紹介」を書かせていただきます。よろしくお願いします!

                     さて、書くとなったはいいが最初はちょっと困りました。今回演奏する楽曲がゲームのどんな場面で流れるかということは皆さんよくご存知のはず。
                     それならば、今回私たちが演奏する交響組曲「ドラゴンクエスト」の楽曲を「オーケストラ曲を分析する」という観点から紐解いていこうと。音楽だけにスポットをあて、作曲技法やオーケストラの技法を見ていくことでこの楽曲の魅力を引き出せたらなと思い、今回は「楽曲分析」という形でつづっていきたいと思います。
                     このブログを読んで頂いている皆様が、「ドラクエの音楽をより聞きたくなった!」「もょもと交響楽団の演奏を聴きたくなった!」 「もょもと交響楽団でドラクエ演奏したくなった!」 などなど、ドラクエの楽曲をより好きになっていただける一助となれば、大変うれしく思います。

                    皆様ご存知のとおり、この一連の交響組曲は国民的人気を誇るRPG「ドラゴンクエスト」の音楽を、作曲者すぎやまこういち氏自身がフルオーケストラのための組曲として編纂したものです。
                     氏の楽曲はゲームの中の電子音で聞くだけでもわくわくしたり涙したり・・・と十分に魅力的なものでしたが、この楽曲がフルオーケストラの交響組曲として発表されたとき、大きな衝撃と感動をもって迎えられました。そして、この楽曲は「オーケストラは堅苦しい」というイメージを一掃し、ゲームのファンである若者達を中心に「クラシック音楽」というものをより身近にすることにも成功しました。
                     現在までにこの交響組曲は9作品発表されていますが、どの作品もすでに「ゲーム音楽」という枠をとっくに飛び越えて、現代のオーケストラ作品として高い評価を得るとともに、数多くの人に愛されるクラシック音楽となっています。

                    それでは、楽曲分析です。今回は公演の第2部・前半3曲です。公演の第2部はファミコン時代のドラクエ(I〜IV)の楽曲からセレクションしてプログラムを構成し、「ドラゴンクエスト・クラシックス」と銘打たせていただきました。
                    (数字はシリーズ番号・曲名はウェブサイト「すぎやまこういちの世界」の表記によります)

                    ●序曲(I)
                     「ドラクエ」ファンにはもうおなじみですね。この「ドラクエI」の序曲を読み解くキーワードは、ズヴァリ「古典」。
                     この序曲はシリーズを通してさまざまな編曲がされていますが、「I」においては、ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)やW.A.モーツァルト(1756〜1791)といった「古典派」に属する作曲家のスタイルで作られています。
                     1つにはそのオーケストレーション(編曲)。ホルンによるファンファーレのあとに、有名な主題が提示されます。他の序曲ではこの主題が金管楽器などで勇壮に演奏されますが、「I」で最初に使われるのは弦楽合奏のみ。ちょっと地味な感じもしますが、その響きは常に気品が漂い、このゲームの世界観をよく表現しているといえます。

                     そして、一番の特徴であるのが「様式」です。シリーズのいろんな序曲を聴いている方にはよくわかるかと思いますが、この「I」だけは、他の序曲とちょっと違いますよね。これは「古典」のスタイルで書かれているため。
                     具体的にいうと、他のシリーズの序曲は「序奏(ファンファーレ)」→「主題」→「主題の再現(繰り返し)」→「結尾(コーダ)」という構成になっています。しかしIの序曲だけは「序奏(ファンファーレ)」→「主題」→「展開(主題の発展)」→「主題の再現」→「コーダ(結尾)」という構成です。これは古典派の時代に確立された「ソナタ形式」という様式にみられる特徴で(序曲全体としては「ソナタ形式」ではないのですが)、この構成がIの序曲を「古典」と読み解く一番大きな要素です。また主題が長調であるのにたいして、展開が短調。この調性の変化もきわめて古典的でありながら旅立ちの高揚感を上げるのに一役買っていますね。

                     さらにスケールを大きくした「主部の再現」。オーケストレーションを変化させて、スケールをアップさせるとともに、3連符を伴奏におくことでスピード感をつけています。その後は勇壮な「コーダ」。これはどのシリーズにも配置されているものですね。
                     この「序曲」、シリーズによってバージョンはありますが、必要な要素のほぼ全てが最初の「I」で確立されているのがわかります。時代を経るごとに形を変えながらも連綿と引き継がれ、新たな魅力を放ちかつより愛されていく音楽の稀有な例であるともいえます。


                    ●Love Song 探して(II)
                    「I」が古典だったの対して、「II」はポップスの要素が取り入れられています。古いファンの方は、この曲に歌詞がつけられてゲームの挿入歌になっていたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
                     一時はサックスが入ったりして、「80年代ポップス」の感覚が前面に出たアレンジもあるのですが、今回演奏するのは弦楽のみでつづられるバージョンです。弦楽といっても弓を一切使わず、「ピッツィカート(弦を指ではじく奏法)」のみで演奏されます。「ポンポン」というピッツィカート特有の音により、全体的に軽く楽しい楽曲に仕上がっています。

                     オーケストラで使う弦楽器のピッツィカート奏法では、「音を一定音量で伸ばす」ことができません。そこで、この曲では伴奏における和声の変化を基本的にアルペジオ(分散和音)にすることによって、より一層この変化を明るくかつポップな形で見せることに成功しています。また、ピッツィカート奏法は音の粒ごとに強弱をつけることができるため、そこで見られる「強弱の駆け引き」が面白さのひとつでもあります。聞いていてとても楽しいことはもちろんですが、演奏しているほうにとってもこの変化がより体で感じることができるのは楽しいものです。


                    ●世界をまわる(街〜ジパング〜ピラミッド〜村)(III)
                    3つの種類の街の音楽にピラミッドの楽曲が加わったメドレー形式の曲。音楽で楽しむ諸国漫遊です。
                     この「ドラクエIII」において、フルオーケストラがはじめて使われます。それもNHK交響楽団という国内最高レベルのオーケストラを手に入れたことによって、作曲者のすぎやま氏は自分の頭に鳴っている音を余すところなく表現するに至ったのでしょう。

                     それゆえか「III」の組曲はオーケストラの表現技法が極めて効果的に使われていますが、その最たるものがこのメドレーの中にある「ジパング」です。「ジパング」とはもちろん「ニッポン」。この情景には日本の古典芸能の一つである「雅楽」を用いています。ヴァイオリン・フルート・オーボエ、ボンゴをそれぞれ雅楽の楽器に見立てているのです。フルートは龍笛(りゅうてき)・オーボエは篳篥(ひちりき)・ボンゴは鼓(つづみ)でしょうか。雅楽に欠かせない「笙(しょう)」は本来はオルガンでしょうが、ここではしょうがなく(?)ヴァイオリンにあてています。さらにここに弦を指板にたたきつける「バルトーク・ピッツィカート」という特殊奏法を低弦楽器に与え、より「みやび」な世界を表現しています。
                     雅楽をオーケストラで表現したもののひとつに、近衛秀麿(1898〜1973)の「越天楽(えてんらく)」という作品があります。これは雅楽の同名の曲をオーケストラで表現したものですが、雅楽そのものなので、聞いた印象はちょっと難解なところがあります。しかしこの「ジパング」で素晴らしいのは雅楽の世界を表現しながらも、メロディラインが「西洋の語法」(=クラシック)を決して崩していないところ。ここに編曲の巧みさが加わって、曲そのものはしっかり「雅楽」でありながらも不思議と耳になじむ見事な「和洋折衷」を作り上げているのです。

                     また、すぎやま氏の管弦楽技法の魅力のひとつが「同じメロディから違う情景を見せる」こと。このメドレーのすべての曲に見ることができます。たとえば「村」1つのメロディが最初はクラリネットで、2回目はトロンボーンで演奏されます。フレージングの違いもありますが、その演奏が見せる情景はまったく違ったものになってませんか?こんな風に聞き比べるのも楽しいですね。

                    次回は、第2部の後半3曲についてお届けします!お楽しみ(?)に!


                    | 1/1PAGES |